ポピュレーション・ストラテジー
本日の日経新聞「医出づる国」の内容はポピュレーション・アプローチの話であった。長野県松本市では「市民歩こう運動」を進めている。記事によると市長の菅谷昭さんは医師でもあり、市長のもとでウォーキングマップの作製、健診受診を呼び掛ける推進委員会の結成、糖尿病の重症化予防のためにかかりつけ医や薬剤師との連携を促進、健康関連産業の育成、保健師などによる企業での健康講座の実施などの健康施策を積極的に行っている。記事の後半では久山町での健診結果に基づく保健指導の記載もある。前者の松本市の試みのように健康対策を全ての住民にアプローチする手法をポピュレーション・アプローチ、一方後者の久山町の例のようにリスクの高い人に重点的に関わる手法をハイリスク・アプローチと呼ぶ。別の紙面にはQ&Aとしてこの2つのアプローチの違いを説明して、実際には多くの国々がハイリスクアプローチに力を入れているがポピュレーション・アプローチも重要であると記載してある。ただポピュレーション・アプローチでは費用対効果の検証が大事だとも述べている。
私事ではあるが、緑市民病院在職中に、「みどりシティーフェスティバル」という、毎年秋に大高緑地公園で行われている区民のお祭りに病院として参加出来るように働いていた。昨年はそのお祭りで予防医学の講演を行った。その講演の中では予防医学のパラドックスとして、小さなリスクを負った大多数の集団から発生する患者数が大きなリスクを抱えた少数のハイリスク集団からの患者数より多いことを説明した。さらに本日の記事と同じポピュレーション・アプローチ(ポピュレーション・ストラテジー)とハイリスク・アプローチ(ハイリスク・ストラテジー)の説明を行った。予防医学のパラドックスからハイリスク・ストラテジーも大事だがポピュレーション・ストラテジーがより重要である事を紐解いた。例え話として、脳卒中の発症リスクを下げるためには、ハイリスク・ストラテジーとしての高血圧症患者さんへの降圧薬処方など医学的アプローチも大事だが、誰にでも小さなリスクがあることを全ての人が意識して、減塩、禁煙や毎日できる運動などの啓蒙などで全員でそのリスクを減らし、健康水準を引き上げる努力をするポピュレーション・ストラテジーがより重要であることを講義した。
私は、相川みんなの診療所の開院後には、クリニックのすぐ北にある螺貝公園を中心に地域の健康増進のための運動をしていきたいと考えています。このことは一人で進めていく事は効果を望めないため、一緒に行動を共にしていただける方々の協力も仰いでいきたいと思っています。