増えている大腸がん
2016年人口動態統計によると、日本人の死因第1位はがんなどの悪性新生物です。そのがんの中でも大腸がんによる死亡率は年次増えており、その死亡数は、国立がん研究センターがん情報サービスによる2017年の予測では女性で第1位、男性でも第3位でした。年齢別に見た罹患率は40歳代から増加しはじめ、50歳代から急増し高齢になるほど高くなります。大腸がんは女性より男性にやや多い傾向があります。
大腸ポリープは大腸がんのもと
大腸がん(結腸・直腸がん)は正常な大腸粘膜から直接発生するものもありますが、半数以上は良性のポリープである腺腫から発生します。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。大腸がんが発生すると次第に大腸の壁に浸潤しやがて大腸の外まで広がったり肺や肝臓などの他の臓器に転移したりします。
大腸ポリープや早期の大腸がんは症状がない
ポリープや大腸がんは早期の段階では自覚症状はほとんどありません。がんが進行すると血便や腹痛、便が残った感じ、おなかの張った感じ、貧血、体重減少などをきたします。血便は痔やその他の良性の疾患でも見られますので血便の時には痔だと思い込まずに消化器科などの医療機関を受診することが大事です。大腸がんのためにおう吐や腹痛を伴うまで進行し緊急手術となった場合は手術後の経過が芳しくない場合が多く、早めのチェックが望まれます。
大腸がんの5年生存率は比較的良好
2006年から2008年にがんと診断された人の5年生存率は男性で59.1%、女性で66.0%だったのに対し、大腸がんは男性で72.2%、女性で69.6%と大腸がんはがんの中では比較的生存しやすいがんです。またがんと診断されてから年数別の生存率であるがんサバイバー生存率は大腸がんでは診断から年数が経過するにつれて高くなる傾向がありました。
大腸がんで亡くならないためには予防と検診
がんの予防には禁煙、節度ある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体系、感染予防が効果的です。そのうえで大腸がんを予防するには加工食品や牛や豚などの赤い色の肉を避けて食物繊維を多く含む食品を積極的にとり、習慣的な運動が効果的です。
大腸がん検診は40歳以上の人が1年に1回、問診と便潜血検査をすることが勧められます。毎年便潜血検査をすることで、大腸がんによる死亡率を減らすという科学的根拠があります。便潜血検査は安全、簡単、安価です。このような負担の少ない検査にもかかわらず、40才から69才の大腸がん検診受診率は2016年では全国平均で41.6%という数値でした。
大腸がんの進行を予防するためには検査の結果が要精検となった場合に必ず精密検査を受けましょう。精密検査は当院では大腸内視鏡検査を行っています。がんは1回の健診では見つからない場合もありますので毎年定期的に行う事が大事です。また、血便、腹痛、便の性状や回数の変化など気になる症状がある場合は次の健診を待たずに医療機関で相談してください。
治せるがんを早めに見つけて適切に対応することが大事です。